非接触角度測定とは?原理と測定器について
非接触角度測定は、対象物に直接触れることなく角度を測定できる手法です。摩耗が発生しないため繰り返し測定が可能で、精度や耐久性の面で優れています。
本記事では、非接触角度測定が必要とされる背景や具体的な測定手法、精度向上のポイントから、製品例と導入事例までを網羅的に解説します。
非接触角度測定が必要とされる背景
近年、機械や装置の高精度化・高速化が進むなかで、角度測定の正確性や安定性への要求が高まっています。
従来の接触式センサでは、使用回数が増えるほど摩耗や劣化が生じてしまい、精度が低下するリスクが否めません。これに対して非接触式は、回転部やワークに触れないため、摩耗を回避できるだけでなく、長期的に安定した精度を保つことができます。特に高精度な機械加工や品質管理などでは、角度のわずかな誤差が大きな不良や損失につながるため、安定した測定が求められます。
代表的な非接触角度測定の手法
非接触角度測定にはさまざまな原理がありますが、ここでは代表的な手法を紹介します。
近年では、角度センサの小型化や耐環境性の向上に伴い、装置やワーク形状を選ばずに導入できる選択肢が増えています。センサの原理ごとに得意とする測定範囲や設置条件が異なるため、製造ラインの要求や測定環境に応じた最適な手法を選定することが重要になります。
レーザーオートコリメータによる高精度測定
レーザー光を用いることで微小な角度変化を高精度に検出する方法です。光源から発せられたレーザーを対象面に照射し、その正反射光の向きをセンサで解析することで、角度のずれをリアルタイムで把握します。光学系の調整や反射面の確保が不可欠ですが、接触式では実現しにくい高い再現性や安定したデータが得られる点が大きな魅力です。
エンコーダによる角度取得
回転軸やシャフトに取り付けたエンコーダで角度を検出する手法です。パルス出力やアナログ出力など、多様な形式が存在するため、制御システムとの組み合わせが行いやすい点が特長です。小型設計で組み込みやすく、高耐久性に優れ、農業機械や建設機械などの過酷な環境にも比較的対応しやすいことから、幅広い産業分野で利用されています。
変位計の角度測定への応用
変位計は、対象物の移動量を計測するための機器ですが、複数台の変位計を組み合わせることで角度を演算的に求める方法もあります。この場合、センサの設置位置や周辺のスペースなどの条件に大きく左右されるため、適切な配置計画が重要です。接触不要の光学式変位計などを選べば、精度を確保しながら対象物へのダメージを防ぐことができるため、高度な品質管理工程にも対応可能です。
測定精度を高めるためのポイント
非接触方式の精度向上には、周辺環境や対象物の状態への配慮が欠かせません。
精度を追求する場合、センサ自体の基本性能だけでなく、取り付け方法や測定対象の状態が大きく影響します。複雑な作業環境でも安定した測定ができるように、環境条件の整理と対策は入念に行うべきです。
測定対象の材質・表面状態への対処
測定対象の反射率や表面の粗さが異なると、センサの検出精度や安定性に影響が出やすくなります。例えば、光学式の場合は正反射率を高めるために表面処理を行う、あるいは補助的なミラーを配置することも考慮します。適切なセンサや補助装置を選定し、表面特性に合わせた設定を行うことで、測定誤差の原因を最小限に抑えます。
環境要因(温度・振動・設置条件)の考慮
周囲温度の変化や機械振動は、非接触角度測定においても計測値の変動要因となり得ます。例えばレーザー系の場合、温度変化による光軸のずれや機械的な振動から生じるアライメントの変化が精度に直結します。測定対象とセンサの位置関係が固定されるよう、治具の選定やレイアウトを最適化することが重要です。
非鏡面ワークの角度測定対策
非鏡面のワークに対しては、正反射を確保するための工夫が不可欠になります。
一般的に光学式の非接触計測では、鏡面に近い反射面があるほど正確で安定した測定が可能です。しかし実際のワークは鏡面加工が難しい場合も多いため、測定条件に応じた対応策が必要となります。
鏡面研磨やミラー設置による反射面の確保
ワーク自体を鏡面研磨する方法は、測定精度を大幅に高められる一方で、コストや加工工程の負担が増える場合があります。代替案として、ワーク表面に貼り付け可能な反射シートや専用ミラーを用いることも有効です。これにより散乱を抑制し、レーザーオートコリメータなど光学式センサの検出が安定するため、非鏡面ワークでも高精度な測定を実現できます。
大型ワークへの活用:狙いと測定方法
大型ワークでは、高精度な測定が難しくなりがちですが、非接触角度測定によって安定した計測が可能になります。
大型ワークは寸法や重量が大きいため、接触式センサでの測定だと、取り付けや保持に多大な労力を要します。非接触式の導入により、生産ラインへの組み込みが効率化され、工数削減と品質向上を同時に実現できます。また、加工誤差の検出や設備へのフィードバック制御にも役立ち、大型かつ精密な部品製造でも安定した角度管理が行えます。
まとめ:測定環境に合わせた最適な非接触角度測定を選択が重要
ワークの表面状態や作業環境、要求精度に応じて測定器を選び、最適な角度測定システムを構築することが重要です。
非接触角度測定は摩耗リスクが低く、長寿命でありながら高精度を実現できる手段として多方面で注目されています。レーザーオートコリメータやエンコーダ、変位計など、それぞれの手法に一長一短があるため、用途や導入コスト、メンテナンス性を総合的に検討することが肝心です。ワークの種類や生産ラインの条件に合ったセンサを選び、最適に組み合わせることで、品質向上と生産性アップを両立することが期待できます。