チルトセンサ(オートコリメータ)
チルトセンサは、当社が取り扱っている製品の中で最も基本的な基幹技術により構成された製品です。
通常、当社の製品はお客様の測定ニーズがきっかけとなり開発するケースが多いのですが、チルトセンサはそれとは違い、当社の製品工場内で光学系の「組み立て」をするための社内治具として開発されました。
チルトセンサが誕生したのはWindows95が発売された1995年になります。
Windowsの登場でインターネットの世界が一般的に知られるようになりはじめましたが、ネット環境といえば電話回線いわゆるアナログ回線がまだ一般的な時代です。
大容量のデータをネットワーク上でやり取りすることはまだかなわないため大容量データを扱うとなるとCD-ROMやCD-Rなどが使用されていました。
当時の当社はというとそのCD-ROMのデータを読み取るための「光学ピックアップ」と言われるデバイスを評価する装置、「スポット評価装置」を主に製造・販売していました。
この「スポット評価装置」はCD-ROMドライブに搭載されている光学ピックアップがCD-ROMのディスク上で作り出すスポットの形状を光学的に測定、分析することで、ピックアップの総合的な性能を評価します。
また、この「スポット評価装置」を組み立てる際、プリズムやレンズ、機械部品などの配置を基準面に対し調整する必要がありました。
この調整のために考え出されたものがレーザを用いたオートコリメータであるチルトセンサだったのです。
それでは、当初は「組み立て」用の社内治具だったチルトセンサがどのようにお客様の元でつかわれるようになったかというと、たまたまお客様の工場にチルトセンサを携帯し装置の「立ち上げ」作業をしていたある日、お客様より
お客様 「カツラオプトさん、その基準確認に使用しているものは何?」
カツラ 「オートコリメータです。」
お客様 「こんな小さいのに?どのくらいの精度で測定できるの?」
カツラ 「1/3000度程度の測定ができます。」
お客様 「ちょうどそのようなものを探していたよ。じゃあ、2週間後に10台を準備できる?」
(「これだ!!!」)
作業員はその日あった経緯を社内へ報告すると社長はすぐにチルトセンサの製造に取り掛かりました。
1週間後にはチルトセンサ10台を持ち込み、正式採用に至りました。当時のオートコリメータはサイズが大きく、形状は円筒状であったために機械装置に設置するのも大変でした。
一方、当社のチルトセンサはサイズが小さいため重量も軽く、形状が箱型あるので機械装置へ設置しやすかったのが採用された決め手でした。
ただ、他のお客様にも売り込んだもののすぐに売れる商品とはなりませんでした。
それは前述しました通り、当時のオートリメータというと円筒形、大きいものと認知され、当社の箱型で小さいオートコリメータはその形状が大きく異なり、他のオートリメータの比較対象として認知されなかったことが要因だと思います。
それならばオートコリメータの既存概念を壊すべく「チルトセンサ」という新しい名称を付け、お客様にご案内し続けた結果、徐々に認知度も上がり、多くのお客様からご指示を頂く現在の製品になることができたのです。